メシを食うのが遅いヤツは何をやらせてもダメ

俺が言えるのは、メシを食うのが遅いヤツは何をやらせても満足にできないってことですかね。これは間違いないっす。
学生時代とか会社員時代、ホームレスになってからもだらだらとメシ食うヤツを見かけたことあるけど、そういうのはほぼ全員、無能だったんで。もう何をやらせてもトロいんっすよ。
食欲は動物の本能じゃないっすか。しかも食事って人間の楽しみだったりもするでしょ? それをチンタラ食うってのは、目的に取り組む能力が欠けてるからなんじゃないっすかね? よくわかんないけど。
あと、集中力もないんだろうな。メシ食うのが遅いヤツって、途中で手と口を止めてボーっとしているけど、ああいうところも確実に他の作業に影響してそうですもん。
★自分もメシを食うのは決して早い方ではないのでドキッとした。よし、有能になるためにこれからはガツガツ食うことにしよう。

沈黙は金じゃなくゼロに過ぎない(男・44才)

沈黙は金ってよく言うよね。ぺちゃくちゃしゃべるより、黙ってることに価値があるって意味なんだけど、俺は違うと思うんだよね。こんな言葉をありがたがるヤツは、単に人間関係に波風が起きるのをビビってるだけだろって。
確かによくしゃべるヤツって、キツイ意見を言ったり、人の悪口も言いがちだから、それで失敗することもあるとは思うよ。
でも逆に、しゃべることで状況をプラスに変えることだってあるわけでしょ。会社と交渉して給料が上がったり、潔白を証明して疑いを晴らしたり。下手したらマイナス面より得になることの方が多いんじゃないかな。
そうなるとさ、沈黙ってショボくない? 状況が悪くならない代わりに良くもならなんだから。そう、ゼロのまんまなんだよ。つまんない生き方だよね。
★たしかに今の世の中、声の大きい人間の方が何かと得をしてる気がする。納得だ。

ホームレスに聞いた自身の格言・金持ちもホームレスも不幸を感じる割合は同じ

今回、調査対象として選んだのはホームレスの方たちである。
過酷な暮らしを通して、彼らがどのような人生訓を得るに至ったのか、実に興味深いところではある。 
新宿、上野、浅草一帯のホームレスに片っ端から声をかけ、ある程度しっかりしゃべれる人にのみ、人生の真実を語ってもらった。
 
●真実その1
金持ちもホームレスも不幸を感じる割合は同じ(男・58才)
いまはこんなに落ちぶれちゃってるけど、昔は外車の販売会社を経営してて、年収で言うと軽く1500万はあったのよ。だから年に3回ハワイに行くとか、子供をインターナショナルスクールに通わせるとか、まあまあ羽振りも良くてさ。
で、いまも当時のことをたまに思い出したりするんだけど、そういうときよく実感するのは、金持ちもホームレスも不幸を感じる割合で言えば、ほとんど同じってことなんだよな。
たとえば年収1500万の時代、不幸が暮らしの20 %を占めていたとしたら、いまの暮らしでも不幸の割合はやっぱり20%だっていうこと。
もちろん起きる不幸のレベルはまったく違うよ。でも、たとえば車屋のころに300万の損失を出すのって、いまの俺には、転売用に拾ってきた空き缶の山を誰かに盗まれるのと同じだからね。下手すりゃ千円で売れることもあるからマジで大損害だよ。
要は、いくらの損害から不幸と感じるかはそのときの暮らしぶりによって違うけど、そういう不幸が起きる頻度は金持ちだろうが、ホームレスだろうが一定だってこと。もちろん、不幸だけじゃないよ。幸せも同じことだから。
だからそう考えると、ホームレスになっても周りが言うほどミジメには感じないっていうかさ。これ、強がりじゃないよ。ホントにそう思ってるの。
★どんな境遇でも、人間の感じる幸せと不幸の量は常に同じってことらしい。確かにそうなのかもしれない。ただそうは言っても、やっぱりホームレスよりは富豪の生活に憧れてしまうんだよなあ。
寝酒は人生を破滅させる(男・51才)
若いころは運送会社で長距離トラックを転がしてたんですけど、こういう仕事って行き先によって朝がめちゃめちゃ早いときがあるんです。でも早く寝たくても寝つきが悪いせいで、いつも酒を飲んで強引に布団に入ってたんですよ。
もともと酒は嫌いじゃなかったんですけど、こういう生活を続けていくうちに酒量がすごいスピードで増えていっちゃって。非番の日なんか朝の起き抜けにビールを飲むわで、とうとうトラックに乗る前のアルコール検知で引っかかるようになっちゃったんです。で、何度か始末書を書いた挙げ句、クビを切られました。あとはお決まりのコースですよ。転職活動中に飲酒事故を起こしたり、アル中の診断を受けて入院させられたり、酒を隠す嫁に暴力を振るったのが原因で離婚したり。気づいたらホームレス生活も今年で3年目ですからね。いろいろと後悔は尽きないんですけど、やっぱり思い返すと、すべての始まりは寝酒なんですよ。こいつが僕の人生を台無しにしたんです。
 一時期、アルコール依存症の互助会にも顔を出してたんですけど、あそこに来てる連中の半分以上が、アル中になったきっかけは寝酒だって言ってたし、ホントにヤバい行為なんだなってのが身に染みてわかりました。もう完全に手遅れでしたけどね。
★寝酒が良くない習慣くらいのことは知っていたけど、まさかホームレスの入口になり得るとは。
ホームレスになるヤツは100%人間のクズ
(男・62才)
実体験で学んだ真実? うーん、ひとつあるよ。ホームレスになるようなヤツはクズだってことだね。言っておくけどこれに例外はないから。まず100%そうだから。だいたいちょっと考えてみたらわかることなんだけどさ、今の世の中、ホームレスってそう簡単になれるもんじゃないんだよ。事業に失敗したからとか、会社をクビになったとか、借金の保証人になったとか、みんないろいろともっともらしい言い訳をするんだけど、そこからストレートにホームレスに堕ちるわけじゃないからね。普通の人間はそこに向かう途中で、周囲の助けがあったり、自分で這い上がろうと努力したりするもんなの。
そういうのがなくて初めてホームレスに転落するわけだけど、まず周囲の助けがないってことは、そいつが以前から嫌われてたか、信用のない人間ってことになるよね。つまりそれってクズでしょ。
落ち目から這い上がろうという努力もしないで、ただ泣いてるだけのヤツも当然クズだしね。
実際に公園で生活してみるとわかるけど、ホント、クズしかいないから。嘘つきに泥棒、あとは他のホームレスをイジメることに生きがいを感じてるヤツ、こんなのしかいないもん。
★ちなみにこの方がホームレスになった経緯も聞いたのですが、﹁失業後に窃盗を繰り返した挙げ句、食い詰めたので﹂とのことでした。確かに同情の余地はなさそうです。
細かいことを気にする人間ほど無能であることが多い(男・42才)
細かいことを気にする人間ほど大事なことをわかってない場合が多いよね。あれって何なんだろうね。大事なことがわかってないから細かいところに目が行っちゃうのか、細かいことに神経を使う性格だから、大きなものが見えないのか、その辺はよくわかんないんだけど、とにかく、そういう細かい性格の人って無能なことが多いと思うな。
 昔、飲食店でバイトしてたことがあるんだけど、そこの店長がすごく細かい性格で、お辞儀の角度とか言葉遣いとかすごく口うるさかったの。それ自体は悪いことでもないんだけど、呆れるのが、その店長、客に出す料理には全然ユルいんだよね。オイシイものを作ろうとか、新しいメニューを研究しようとか、そういう気持ちが欠けてるの。飲食店として終わってるよね。ホームレスにもその手の人はいるよ。アルミ缶を拾いに行くんだけど、ゴミ箱から律儀にアルミ缶だけを選んで集めるから、
時間をかけた割にはあんまりカネにならないっていうね。
あんなのゴミ箱の袋ごと持ってきちゃって、あとから要らないものを取り除けばずっと効率いいのに。変なとこにこだわるから、時間と体力をムダにしてるよね。
★路上ナンパでもこういうタイプは多そうだ。髪型がイヤ、性格がキツそうなんて言ってると、結局、何の成果も出ないんだよなあ。
 
●真実その5社交的な人間は信用するな(男・49才)
社交的な人っているだろ。話しやすいし、物腰も柔らかいからコロッと信用しちゃったりするけど、俺はそういうヤツとは距離を取るようにしてるね。
だって、社交的なヤツが社交的なのは、性格がフレンドリーだからじゃないし。あれは他人に気に入られることで自分が得をしたいって思ってるからなんだよ。いやホントだって。
たとえば初対面の人間がたくさん集まる場所に行ったとするじゃん。そこにいるのが良いヤツか嫌なヤツかまだわからないのに、あいつらが愛想を振りまくのは何で?  気に入られたいからだろ? じゃあ、気に入られたい理由は? 何か得になることがあるかもしれないっていう嫌らしい期待しかないじゃん。
もちろん中には、どう考えても下心のなさそうな自然体の人もいるよ。でも、そういうヤツだって、結局は相手の懐に入って甘えてやろうって考えているから、無意識に。だからやっぱ同類だよ。
 こういうのって俺からしたらすごく気持ち悪いし、実際に付き合ってみても、軽薄で自己中心的なヤツが多いなって感想しかないし。平気で人を裏切ったりするのも、このタイプなんだよな。
★部分的に同意できるところもあったのですが、どうも少し偏りすぎてるような…。純粋に社交的な人だってフツーにいるでしょうし。
 
●真実その6バカのフリをすれば何かと都合がいい(男・50才)
ホームレスになってけっこう経つけど、その間にわかったことは、バカのフリをしてればイイことが多いってことだな。バカのフリっつうのは、人に話しかけられてもワンテンポ遅れて反応するとか、テキパキ動かないとか、そういうこと。あと自分の意見を積極的に言わないとかさ。そうやってると、まず周りが世話を焼いてくれるわけだ。炊き出しが来ると知り合いのホームレスが知らせに来てくれたり、粗大ごみがよく捨てられてるエリアをこっそり教えてくれたりとかさ。粗大ごみには、売ればカネになるものが結構あるから。
ボランティアの人も優しくしてくれるよ。あの人たちが古着とか運んでくるとさ、普通はみんな早い者勝ちで持ってっちゃうんだけど、俺が取りに来るまでマシな服を避けておいてくれるわけ。ホント、よくしてもらってるよ。
つっても、たまにボロが出てウソがばれちゃうこともあるんだけど、そういうときはまた別の街に行けばいいだけだからさ。どっちかっていうと、ホームレスの中には、俺って頭がいいんだぜってアピールするヤツが多いんだけど、ああいうのは本当のバカだと思うな。変に頼られたら面倒ごとが増えるし、そういうヤツって実際は賢くないから、結局、大したことないじゃんって評判を落とすだけなんだな。そうなるとイジメられるし最悪だよ。
★これは一般社会にも応用できそうな教訓かも。もっとも、バカを演じ過ぎて会社をクビになったら元も子もないけど。

あなたが墓場まで持っていく秘密を今ここで聞かせてください

あなたが墓場まで持っていく秘密を今ここで聞かせてください

人は誰しも秘密を持っているものだ。嫁に隠れて浮気してるなんてのはまさにありが
ちだが、こちらが求めているのは、そんな軽い(?)ものではない。
 

知り合いにバレたら人格を疑われるような、ドン引きされるような、言わば、墓場ま
で持っていくような秘密を聞きたいのだ。
そういうものでなければ、心に響くドラマなど、存在し得ないのだから。
 

取材は、公園でヒマそうにしている人に「墓場まで持っていこうと思ってる秘密を教えてください」と片っ端から頼み込む方法で臨んだ。
案の定、大半の人に断られまくったなか、どうにか3名の男性が意図を汲んでくれた。
 

さっそくご覧いただこう。

いまからオマエの家を燃やしにいくからな
1人目の浅田さん(仮名、39才)は、都内で働く会社員だ。
「なんかちょっと緊張しますね。人に言うのは初めてなんですよ」
話は25年前の3月にさかのぼる。北関東出身の浅田さんは当時15才。その夜は勉強机にかじりついていた。

翌日は高校の入試日。人生で最初の関門に挑む大事な日である。
緊張はあまりしていなかった。彼の志望校は公立の普通科高校で、進学校としては中レベルの位置。普段の実力を出せれば、余裕で合格だと担任教師からも太鼓判を押されていた。
自室でなぜかふと、友人から聞いた話を思い出した。
『田中(仮名)がオマエの私服ダサいって笑ってたらしいよ』
 

田中くんはクラスメイトだが、特に親しい間柄でもない。
どちらかといえば、クラスの地味グループに属していた彼をどこか軽蔑していたところもあった。
「そんな田中にバカにされたんだって思うと急に腹が立ってきたんです。なんで俺が、あんなサエないヤツにって」
一度気になりだすと、田中くんの顔が頭から消えることはなかった。
そこからの記憶はあいまいになる。ハッキリと覚えているのは、夜9時ごろに田中くんの自宅に電話をかけたこと、応答した母親に偽名を名乗って彼を呼び出したこと、そして…。
「田中が電話に出た瞬間、わざと低い声を出して怒鳴ったんです。いまからオマエの家
を燃やしにいくからな、本気だぞって。向こうはずっと黙ってたから、ビックリしてたんだと思います。調子に乗って、こんな電話を何回か繰り返してやりました」
 

イタズラ電話で溜飲が下がったのか、翌日の入試は会心の出来。彼は志望校に見事、合格した。

ヤバい、絶対に俺のせいだ

田中くんが公立高校の受験に失敗し、スベリ止めの私立高へ行くことになったと知る
のは、卒業式が終わってしばらくのことだ。
「その時期って誰が入試に落ちたかって情報が飛び交うじゃないですか。で、田中の話が回ってきたとき、瞬間的に思ったんです。ヤバい、絶対に俺のせいだ、どうしようって。本当に焦りましたよ。ムカついてイタ電はしたけど、受験に失敗しろとまではさすがに思ってませんでしたから」
イタズラ電話が本当に不合格の原因になったのかはわからない。それを判定できるのは田中くん本人だけだが、むろん、そんなことは聞けない。
イタ電の犯人は自分だと名乗るようなものだからだ。
とにかく浅田さんは自責の念に苛まれるようになり、その思いは数年経ってより大きなものに。
「田中が入学した私立高って、その地域じゃガラが悪くて有名だったんです。それで高2くらいだったかな、アイツが暴走族をやってるってウワサを耳にしちゃって。それでまた気持ちが暗くなっちゃったんです」
やがて浅田さんは大学生になり、それから社会人に。

一方の田中くんはまっとうな道からどんどん外れていく。地元に帰ると、彼の近況がイヤでも伝わってくるのだ。
『同級生に田中っていたじゃん。アイツ、あやしい連中とつるんで、ヤクザまがいの金融屋をやってるらしいよ』
『聞いた? 田中が捕まったんだって』
そんな話を聞くたび胸が苦しくなった。
ただ、第三者の立場から言わせてもらえれば、少し気にしすぎではないかとも思う。
百歩ゆずって、浅田さんが入試の失敗を引き起こしたのだとしても、その後の流れは田中くんが自分の意思で選択した結果だ。そこまで責任を感じる必要はないのでは? 
率直な感想を伝えると、彼は苦笑いした。
「できれば僕もそう思いたいんですけど、アイツがおかしくなった原因は、どう考えても受験に失敗したことなんです。てことはやっぱり僕のイタ電が大元になりますよね。
それに一昨年だか、アイツの家族が離散しちゃったらしくて。
こんなの、もう僕ひとりじゃ抱えきれないと思ってたところだから、こんな形で話せ
て少しスッキリしましたよ」

 

液体の飛び出た古い乾電池がわんさかある店の経営者の北村さん
(仮名、42才)に秘密を打ち明けてほしいと頼んだとき、
彼の条件はこれだった。
「年齢と名前をボカしてくれるならいいけど」
というわけで、以下の話も学年を少し変えている。
 

北村さんが思い出すのは、はるか昔の小学校時代だ。当時3年生だった彼は、下校の際、毎日、同じメンバーで帰宅していた。Aくんと真理子ちゃん(仮名)。近所に住むクラスメイトだ。
ある日、いつも帰り道に通りかかる廃材置き場で、焚火のようにゴミが燃えていた。周囲に大人はいない。
珍しいものを見ると、大騒ぎするのが子供の習性だ。3人は炎に駆け寄った。
近くの木やゴミを投げ入れて遊ぶうち、ふと北村少年は足元の紙袋が気になった。中には液体の飛び出た古い乾電池がわんさか入っていた。
 

彼はそれを拾い上げ、炎の中に投げ捨てた。その行動に特別な意味はない。これも燃えるだろうな、ぐらいの感覚だ。
「乾電池を燃やせばどうなるか、それがわかってたらあんなこと絶対にやらなかったね。いまだに悔やんでますよ」
しばらく後、タンと大きな音が鳴った。
僕は何もやっていない
その直後、真理子ちゃんが悲鳴を上げてうずくまった。
火にあぶられて暴発した乾電池の破片が、彼女の顔に直撃したのだが、もちろん、こ
のときの北村少年は何が起きたのか理解できていない。わかっていたのは、クラスメイトがケガをしたことと、彼女の親にすぐに知らせなければならないことだけだった。
翌日、痛々しい包帯姿で真理子ちゃんは登校する。眉間とホホにヤケドを負ったのだという。
ここでようやく彼は自分のせいで起きた事故だとわかったのだが、話を聞いていると、どうも真理子ちゃんとAくんは、彼が乾電池を捨てたところを見ていないようだ。

真理子ちゃんに対して、罪悪感を覚えていた北村少年は、その罪悪感ゆえに、真実にフ
タをかぶせる決心をした。僕は何もやっていない、と。
学校は、その空き地の持ち主、元々ゴミを燃やしていた土建屋か解体屋かだかを非難
し、ちょっとした騒動になったという。
「そのときの火傷が跡になっちゃって。眉間の方はキレイに治ったんだけど、ほっぺたの方がねえ。化学ヤケドって言うんだっけ? 電池の中の液体が付着した火傷は跡が消えにくいんだって。女の子の顔だからね。真理子ちゃんとは中学も同じだったけど、火傷の跡はずーっと消えないままなんだよね。成人式のときもハッキリ見えたんだよなあ。今も残ってるとしたら、一生ずっとあの日のことを悪夢として記憶しつづけるんだろうね。
この話、誰かにしちゃうと、どっかで彼女の耳に入りそうで、とても言えなくて。本に載せるなら絶対、仮名でお願いします」


ひとりだけガタガタと震えている生徒が
 谷口さん(仮名、45才)は自動車メーカーの営業マンで、声をかけたときすでに酔っ払っていた。緊急事態宣言の影響でどこの居酒屋も早く閉まってしまうため、仕事帰り、公園で飲んでいたのだという。
「何でも聞いてください。今ならぜんぶ話す自信がありますから」 

東北地方で生まれ育った谷口さんは、小学校のころから剣道に励む、活発な子どもだ
った。友だちも多く、本人によれば「女子からもまあまあ人気がありました」とのこと。
中学生になってからも剣道は続けた。県大会では優秀な成績を収め、3年生になると部の主将に。県大会での優勝を目指し、毎日、夜遅くまで練習づけの生活を送っていた。
そんなある日、ショッキングなニュースが飛び込んでくる。
剣道部の1年後輩、宮田くんが死亡したというのだ。死因は脳内出血、突然死だった。
道場に、生徒たちのすすり泣く音が響く。宮田くんは2年生ながら剣道部の主力を担っていた実力者で、誰からにも好かれる、愛されキャラでもあったのだ。
顧問の教師を筆頭に、全員が宮田くんの死を悲しむなか、ひとりだけガタガタと震えて
いる生徒がいた。谷口さんである。
「もうほとんどパニック状態でした。こりゃ絶対、誰にも言えないって」
脳内出血の傷口を広げてしまったんじゃ
宮田くんが死亡する数日前のことだ。いつものように厳しい練習を終え、谷口さんが着替えを始めようとすると、宮田くんが駆け寄ってきた。
カウンター技である「抜き胴」を練習したいので、谷口さんの胸を借りたいと彼はい
う。もちろん、二つ返事で応じた。
居残り練習が終わると、彼らは地べたに座り込み、雑談を始めた。すでに他の部員は帰っていない。道場にいたのは彼らだけだ。
最初は剣道の技や練習方法についてあれこれ喋っていたのだが、やがてなぜか体操用のマットの上でプロレスをすることに。
「もちろん、本気でなんかやってませんよ。運動部って先輩と後輩がじゃれあうノリみ
たいなのがあるじゃないですか。ホント、あんな感じです」
 ワザを掛け合い、倒したり倒されたり。ただそれだけの遊びだが、宮田君の死を聞いたとき、どうもそのときのことが気になってならなくなった。
「頭を打ったとかじゃないんですけど、脳内出血の傷口って言うんですか? それを広
げてしまったんじゃないかって。足を持って回したりとかしてたから」
亡くなった数日前の出来事ということもあって、どうしても因果関係があるように思えてしまうのだという。
彼は今も、あの放課後を思い出さないよう思い出さないよう努めているのだが、逆に記憶は鮮明になっていくのだそうだ。

信じる者は救われない

人を信じるのはいいことなんだろうけど、立派な大人になったら何でもやみくもに信じるのはやめなさい。これが若いときの僕に伝えたいことですね。
 
職場でまだ新人だったころ、すごくイヤな上司がいたんですよ。もう何かにつけて怒りたがる人で、部下の些細なミスを見つけてはネチネチやるんです。
「お前はこの仕事に向いてない!」
とか「こんな簡単なこともできないなんて頭が悪いに決まって

いい人は社会に出ると損ばかりする

昔から変に他人に気を遣っちゃうんですよ。自分から頼み事ができなかったり、逆に人から何かお願いされたら、こっちが忙しくてもつい「ウン」と言っちゃったり。自己主張や争いごとも苦手だったりするし。
 
そういう性格が自分ではあまり好きじゃなかったんですけど、学生時代は周囲から「あいつはいいヤツだ」って思われて、それなりに人望もあったと思うんです。だからまあ、いいかと。
 
でも、社会に出たらそんなヤツは通用しません。
 
企業ってところは何だかんだ、ゴーマンで押しの強いタイプが出世するようになっているんです。
 
僕の同期にもやたらアグレッシブなのがいて、そいつに都合よく利用されてきたんですよ。で、こっちもバカ正直に協力しちゃうんだけど、上司に評価されるのはゴーマンタイプだけですから。逆に雑務ばかり任されてた僕は、生産性がない、仕事ができないというイメージがすっかり定着しちゃって。
 
だから学生時代の自分に言いたいですね。他人に気を遣って生きるのはもうやめろ、いい人は損するぞって。性格を変えるのはなかなか難しいけど、後々の苦労を考えたらやるしかないですよ。
 
協調性も度を過ぎれば他人に利用される。いやな社会です。

コミュ力ありのブサメンはイケメンに勝る

要は、顔にコンプレックスが
ある人は、できるだけ学生時代
にコミュニケーション能力を磨
いておけって話なんすけどね。
 
というのも会社員になって間もないころ、

よく仲のいい同期
3人で合コンとかやってまして。
 
そのうちの1人は、奥手な性
格で、趣味もオタク系という正
統派のイケメン。もう1人は顔
も体格もゴリラ、でもすごくト
ークが上手いやつで。爆笑を誘
うわけではないんですけど、み
んなを話の中に引き込んで自然
と場の中心になる感じっていえ
ばわかりますかね。で、僕は見
てのとおり顔もキャラもイマイ
チで。
 
この3人で飲み会に行くと、
毎回、笑っちゃうくらい同じパ
ターンになるんです。序盤はイ
ケメンがチヤホヤされるんです
が、そのうちゴリラの独壇場に
なって、最後はヤツが女の子と
どこかへ消えると。本当、モテ
モテなんです。
 
飲み会で終始、空気でしかな
い僕にとっては尊敬ものですよ。
何より、男は顔以上にコミュ力
の高さが重要なんだとわかって
勇気も出たし。だって生まれ持
った顔はどうにもならないけど、
トーク力なら努力で何とかでな
りそうじゃないですか。
 
ただ、忙しい社会人にな
って
から気づいても遅いんです。コ
ミュ力は、ヒマのあり余ってい
る学生のうちに、飲み会で実践
的に磨くしかないんですよね。
 
これを読んでる学生のキミ、
いますぐコミュ力アップの修行
に励んでください!