ホームレスに聞いた自身の格言・金持ちもホームレスも不幸を感じる割合は同じ

今回、調査対象として選んだのはホームレスの方たちである。
過酷な暮らしを通して、彼らがどのような人生訓を得るに至ったのか、実に興味深いところではある。 
新宿、上野、浅草一帯のホームレスに片っ端から声をかけ、ある程度しっかりしゃべれる人にのみ、人生の真実を語ってもらった。
 
●真実その1
金持ちもホームレスも不幸を感じる割合は同じ(男・58才)
いまはこんなに落ちぶれちゃってるけど、昔は外車の販売会社を経営してて、年収で言うと軽く1500万はあったのよ。だから年に3回ハワイに行くとか、子供をインターナショナルスクールに通わせるとか、まあまあ羽振りも良くてさ。
で、いまも当時のことをたまに思い出したりするんだけど、そういうときよく実感するのは、金持ちもホームレスも不幸を感じる割合で言えば、ほとんど同じってことなんだよな。
たとえば年収1500万の時代、不幸が暮らしの20 %を占めていたとしたら、いまの暮らしでも不幸の割合はやっぱり20%だっていうこと。
もちろん起きる不幸のレベルはまったく違うよ。でも、たとえば車屋のころに300万の損失を出すのって、いまの俺には、転売用に拾ってきた空き缶の山を誰かに盗まれるのと同じだからね。下手すりゃ千円で売れることもあるからマジで大損害だよ。
要は、いくらの損害から不幸と感じるかはそのときの暮らしぶりによって違うけど、そういう不幸が起きる頻度は金持ちだろうが、ホームレスだろうが一定だってこと。もちろん、不幸だけじゃないよ。幸せも同じことだから。
だからそう考えると、ホームレスになっても周りが言うほどミジメには感じないっていうかさ。これ、強がりじゃないよ。ホントにそう思ってるの。
★どんな境遇でも、人間の感じる幸せと不幸の量は常に同じってことらしい。確かにそうなのかもしれない。ただそうは言っても、やっぱりホームレスよりは富豪の生活に憧れてしまうんだよなあ。
寝酒は人生を破滅させる(男・51才)
若いころは運送会社で長距離トラックを転がしてたんですけど、こういう仕事って行き先によって朝がめちゃめちゃ早いときがあるんです。でも早く寝たくても寝つきが悪いせいで、いつも酒を飲んで強引に布団に入ってたんですよ。
もともと酒は嫌いじゃなかったんですけど、こういう生活を続けていくうちに酒量がすごいスピードで増えていっちゃって。非番の日なんか朝の起き抜けにビールを飲むわで、とうとうトラックに乗る前のアルコール検知で引っかかるようになっちゃったんです。で、何度か始末書を書いた挙げ句、クビを切られました。あとはお決まりのコースですよ。転職活動中に飲酒事故を起こしたり、アル中の診断を受けて入院させられたり、酒を隠す嫁に暴力を振るったのが原因で離婚したり。気づいたらホームレス生活も今年で3年目ですからね。いろいろと後悔は尽きないんですけど、やっぱり思い返すと、すべての始まりは寝酒なんですよ。こいつが僕の人生を台無しにしたんです。
 一時期、アルコール依存症の互助会にも顔を出してたんですけど、あそこに来てる連中の半分以上が、アル中になったきっかけは寝酒だって言ってたし、ホントにヤバい行為なんだなってのが身に染みてわかりました。もう完全に手遅れでしたけどね。
★寝酒が良くない習慣くらいのことは知っていたけど、まさかホームレスの入口になり得るとは。
ホームレスになるヤツは100%人間のクズ
(男・62才)
実体験で学んだ真実? うーん、ひとつあるよ。ホームレスになるようなヤツはクズだってことだね。言っておくけどこれに例外はないから。まず100%そうだから。だいたいちょっと考えてみたらわかることなんだけどさ、今の世の中、ホームレスってそう簡単になれるもんじゃないんだよ。事業に失敗したからとか、会社をクビになったとか、借金の保証人になったとか、みんないろいろともっともらしい言い訳をするんだけど、そこからストレートにホームレスに堕ちるわけじゃないからね。普通の人間はそこに向かう途中で、周囲の助けがあったり、自分で這い上がろうと努力したりするもんなの。
そういうのがなくて初めてホームレスに転落するわけだけど、まず周囲の助けがないってことは、そいつが以前から嫌われてたか、信用のない人間ってことになるよね。つまりそれってクズでしょ。
落ち目から這い上がろうという努力もしないで、ただ泣いてるだけのヤツも当然クズだしね。
実際に公園で生活してみるとわかるけど、ホント、クズしかいないから。嘘つきに泥棒、あとは他のホームレスをイジメることに生きがいを感じてるヤツ、こんなのしかいないもん。
★ちなみにこの方がホームレスになった経緯も聞いたのですが、﹁失業後に窃盗を繰り返した挙げ句、食い詰めたので﹂とのことでした。確かに同情の余地はなさそうです。
細かいことを気にする人間ほど無能であることが多い(男・42才)
細かいことを気にする人間ほど大事なことをわかってない場合が多いよね。あれって何なんだろうね。大事なことがわかってないから細かいところに目が行っちゃうのか、細かいことに神経を使う性格だから、大きなものが見えないのか、その辺はよくわかんないんだけど、とにかく、そういう細かい性格の人って無能なことが多いと思うな。
 昔、飲食店でバイトしてたことがあるんだけど、そこの店長がすごく細かい性格で、お辞儀の角度とか言葉遣いとかすごく口うるさかったの。それ自体は悪いことでもないんだけど、呆れるのが、その店長、客に出す料理には全然ユルいんだよね。オイシイものを作ろうとか、新しいメニューを研究しようとか、そういう気持ちが欠けてるの。飲食店として終わってるよね。ホームレスにもその手の人はいるよ。アルミ缶を拾いに行くんだけど、ゴミ箱から律儀にアルミ缶だけを選んで集めるから、
時間をかけた割にはあんまりカネにならないっていうね。
あんなのゴミ箱の袋ごと持ってきちゃって、あとから要らないものを取り除けばずっと効率いいのに。変なとこにこだわるから、時間と体力をムダにしてるよね。
★路上ナンパでもこういうタイプは多そうだ。髪型がイヤ、性格がキツそうなんて言ってると、結局、何の成果も出ないんだよなあ。
 
●真実その5社交的な人間は信用するな(男・49才)
社交的な人っているだろ。話しやすいし、物腰も柔らかいからコロッと信用しちゃったりするけど、俺はそういうヤツとは距離を取るようにしてるね。
だって、社交的なヤツが社交的なのは、性格がフレンドリーだからじゃないし。あれは他人に気に入られることで自分が得をしたいって思ってるからなんだよ。いやホントだって。
たとえば初対面の人間がたくさん集まる場所に行ったとするじゃん。そこにいるのが良いヤツか嫌なヤツかまだわからないのに、あいつらが愛想を振りまくのは何で?  気に入られたいからだろ? じゃあ、気に入られたい理由は? 何か得になることがあるかもしれないっていう嫌らしい期待しかないじゃん。
もちろん中には、どう考えても下心のなさそうな自然体の人もいるよ。でも、そういうヤツだって、結局は相手の懐に入って甘えてやろうって考えているから、無意識に。だからやっぱ同類だよ。
 こういうのって俺からしたらすごく気持ち悪いし、実際に付き合ってみても、軽薄で自己中心的なヤツが多いなって感想しかないし。平気で人を裏切ったりするのも、このタイプなんだよな。
★部分的に同意できるところもあったのですが、どうも少し偏りすぎてるような…。純粋に社交的な人だってフツーにいるでしょうし。
 
●真実その6バカのフリをすれば何かと都合がいい(男・50才)
ホームレスになってけっこう経つけど、その間にわかったことは、バカのフリをしてればイイことが多いってことだな。バカのフリっつうのは、人に話しかけられてもワンテンポ遅れて反応するとか、テキパキ動かないとか、そういうこと。あと自分の意見を積極的に言わないとかさ。そうやってると、まず周りが世話を焼いてくれるわけだ。炊き出しが来ると知り合いのホームレスが知らせに来てくれたり、粗大ごみがよく捨てられてるエリアをこっそり教えてくれたりとかさ。粗大ごみには、売ればカネになるものが結構あるから。
ボランティアの人も優しくしてくれるよ。あの人たちが古着とか運んでくるとさ、普通はみんな早い者勝ちで持ってっちゃうんだけど、俺が取りに来るまでマシな服を避けておいてくれるわけ。ホント、よくしてもらってるよ。
つっても、たまにボロが出てウソがばれちゃうこともあるんだけど、そういうときはまた別の街に行けばいいだけだからさ。どっちかっていうと、ホームレスの中には、俺って頭がいいんだぜってアピールするヤツが多いんだけど、ああいうのは本当のバカだと思うな。変に頼られたら面倒ごとが増えるし、そういうヤツって実際は賢くないから、結局、大したことないじゃんって評判を落とすだけなんだな。そうなるとイジメられるし最悪だよ。
★これは一般社会にも応用できそうな教訓かも。もっとも、バカを演じ過ぎて会社をクビになったら元も子もないけど。